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牙を剥く
そいつにエスコートされながら部屋に向かう。なんだ、案外ちょろかったな。主人がしくじるなと言っていたから、かなりガードの固い相手だと思っていたがそうでもないらしい。
部屋に入って誘導されるがまま、ベッドに腰掛ける。するとその男は私にグラスを差し出した。
「チェイサーだよ。飲むといい」
やけに準備がいいな。水を注ぐ余裕なんてなかったはず。これは飲まない方が良さそうだ。
「ありがとうございます」
とりあえず口をつけて飲んだ振りをした。すると男の口角が上がる。
「案外簡単だね。もっとガードが硬いと思ってたよ」
やっぱり薬入りか。下衆め。
「あら、なんのお話かしら」
グラスを置いて男と対峙する。つもりが、グラスは手から滑り落ちた。
「飲んでなくても水が唇についただろう?もう君は動けなくなるよ」
どうやら睡眠薬なんて可愛いものじゃなかったらしい。麻痺剤か何かだな。頭では理解していても、四肢がだんだん痺れてくる。
「それなら早く仕事を終わらせて、さっさと帰らせてもらうことにする」
踏ん張りの効かない体に鞭を打って、隠し持っていた鉄扇を取り出す。
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