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おまけ3
おまけ3
「セルヴェル、悪かったな。…想定外だった、それに、私の考えも甘かった…」
目の前で見たことないほどに不貞腐れるセルヴェルに包帯を巻きながら謝罪を繰り返す。
「大丈夫、分かっているさ…戦場なんて想定外で溢れているからな」
セルヴェルはそうはいうもののまだ明らかに機嫌が直っていない。
おそらく想定外の敵襲ではなく、想定外の敵襲に襲われた弟を守りに行ってやれなかった自分に対してだろう。
「…そういえばあの黒いローブの少年はどうしたんだ、初めて見たが」
「あぁ、コウモリは引き取ったんだ。うちの新しい伏兵としてね」
「あの若さであれ程できるのなら引き入れるのは中々大変だっただろう」
「いや、中々性格に難があってね、それに……出会ったときのコウモリは致命傷を負っていてね、多額の費用がないと治せないほどの。それを肩代わりするかわりに来てもらったから実質少しの費用だけさ。それも後の利益で賄えるがね」
「…そうか、今度礼に行くよ」
「お前の礼ならきっとあれも喜ぶよ」
やはりコウモリは私とは違い一流の剣士であるセルヴェルも認めるほどの腕前であったらしい。
「お前の家の本家筋の人間とあれを近付けることは…本当に意味があったんだよな…」
「あぁ、とても重要なことだよ。私達にとってね」
「ならいい、お前を信じる」
「…セルヴェル…、ふふっ…ありがとう」
またセルヴェルが珍しい姿を見せたものだから笑ってしまい、「どうした」とセルヴェルに問い詰められる。
「いや、ね、君が人に嫉妬するなんて久しぶりじゃないかい、昔みたいだ」
その言葉にセルヴェルはとても驚いたようで眉間のしわが消え、目が見開いた。
そして、「そう…か…?」と考え込みだしたせいか大人しくなった。
その姿がまたおかしくて笑っていると後ろの扉がボロボロの怪我人によって開け放たれた。
「ちょっと!!フォード様!?ありゃないでしょう、こっちも忙しいのにどれだけ兵員持っていくつもりですか!?」
「それでもお前はこうして勝利を収めているじゃないか、ヒース」
「そりゃあ頑張りましたからね!!だいぶ頑張りましたからね!!ちょっとは報酬弾んでくださいよ!?」
「分かった、ここしばらくのお前の悪戯のツケから差し引いておこう」
「え、あ、それは…違うんじゃないですか…?セルヴェル様もフォード様に何か言ってやって下さいよ!!」
「…?」
私と、セルヴェルと、仲間と、相変わらずのうるさい日々。
私にはこれがなによりも愛おしく感じる。
しかし、これを得るために我々は、敵は、またたくさんの血を流した…。
これはきっと間違っている。
…この世界はきっと間違っている。
お前もあいつも…まだそう思ってくれているよな。なぁ、セルヴェル。
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