おまけ7

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おまけ7

おまけ7 「今日の軍議はさすがに厳しかったな」  隣に座るフォードが「ようやく開放された」と伸びをする。予想以上に話が大きくなっているせいで誰もが混乱している状況だから仕方ない話ではあるが、流石に今日は疲れた。  窓の外は日がほとんど沈んでいた。予定よりも遅くなってしまった。あれを待たせているだろうか。 「外国から、正体の分かりきっていない相手から攻められるのは久しいからな。…最高財務官のローシェンじいさんでさえ外国との戦争のことはろくに覚えてないぐらいだからな」 「あー、あのじいさんセルヴェルの家と関係があったんだっけ。…まあ戦後の弱っているタイミングは狙い所だから仕方ないといえば仕方ないのかもしれないがな…」  昔習ったことがある文面だな、と思うが何の教科だったか思い出せない。学生時代ならフォードに叱られるなと思う。 「そういえば…一時的に軍から離れてくれるか、セルヴェル」  フォードが突拍子も無い提案を持ち出してくる。 「…?…お前が言うなら構わんが同盟国設立阻止のための作戦は大丈夫なのか、あれは人員的にも戦略的にもかなりギリギリだろう」 「思ったよりも東に潜伏している支援国からの伏兵が多い、あの少年を守りきれる保証がない。それにここからの戦争はかなり熾烈になる。あの少年には荷が重い、できれば離れていてほしい。かと言ってここにあの少年を置いていても危険だ。お前のことをよく思っていないやつらにどうされるか分からん」  相変わらず見えている世界が違う。おそらく私が一生勉強してもフォードと同じ景色は見えないのだろう。  しかしフォードの指示は受けるしかないが…今回の指示は受けてしまえばこの先の課題のほとんどをフォードに押し付けてしまうことになる。フォードだけでなく周りにもかなり過酷な道を歩ませてしまうだろう…簡単に請け負うには荷が重い話だが…だが… 「…分かった…すまない。…私はどこにいればいい」 「一旦二人で南に行ってくれるか?年に一度の南との交換留学の枠を取っておくからそれを持っていけば楽なはずだ。そして向こうについたら私達が学生だった頃に南から交換留学に来ていた南の第二王子いただろう。あいつに会ってきてほしい」  南の第二王子…そういえばいた気がする。  私とフォードとやつ、アルジュの3人でいたころはいつも何かと世話をやかれていた覚えがある。 「あぁ、アルジュか。あいつに何か用があるのか?」 「アルジュも実は学生時代から私達の案に乗ってくれていてな、今回の同盟国による変更分を伝えてきてほしい。あと南の現状を見てきてほしい。…それと、あの少年にはこれで誤魔化せ、真実を知っているのは最低限の人間だけでいい」 「そうか…自信はないが善処しよう」  フォードの手元で小さな紙に今回の南への留学の表面上の理由がすらすらと書き綴られていく。今回はフォードと私の仲違いが原因ということにするらしい、そう公表しておくことで今後の私とフォードの密書交換を隠しておくのだろう。あれに嘘をつくのは心苦しいが…これは仕方のないことだ。…しかし長いな、覚えきれるものか。  それにしても、政治や経済はさらに苦手だ…。そのせいで稼業を継げずに軍人になったまである。 「お前もあの少年も座学は駄目だからなぁ、先生としての仕事は中々骨が折れるだろうな」 「分かっているなら他の方法にしてくれても良かったんだがな」  まだ学生に剣術で負けることはないと思うが座学となると…不安だ。 「流石に停戦中とはいえこの状況だと南に上級兵士を長期間留める方法がなくてな、悪いな」 「…セルヴェル、お前が前線から離れる日が来るとはな」 「前線よりも大切な物が出来ただけだ、…2度も過ちは繰り返さんよ」 「あぁ、繰り返させないよ」  疲れ切るといつもこの話をしてしまう。目標が、目的がわからなくなってしまわないようにするために。 「…私はそろそろ引き上げるよ、これからのことを進めておきたい。それと今度セルヴェルのところの部下をまとめて貸してもらえるかなできるだけ同盟国設立を遅らせたい、それと…」 「あぁ、分かった。伝えておくよ」  広い会議室の中2人でかなりの時間を過ごしていてしまったらしい。  先に帰ろうとするフォードから追加の仕事を渡される。留学が始まるまでに大急ぎで片付ける必要のある仕事が山積みのようだ。  流石に帰らないとな、それと例の書類いつあれに渡そう。そう考えながらフォードに続いて立ち上がる。  フォードは会議室の向こうの廊下で立ち話をしていた。相手はヒースのようだ。  また苦労をかけるから挨拶をしていこうと立ち寄るとフォードがやれやれとため息をついていた。 「すまんセルヴェル、若い二人が揉めたらしい」
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