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新たな任務
「護衛、任務ですか」
目の前の書類に書かれたその単語は僕にはあまり聞き馴染みがありませんでした。
「そうだ、作戦は一週間後に行う。…久しぶりの実践だ、気を引き締めておけ」
「はい、お兄様」
先の戦線以来の、久しぶりの実践。
平和な時間の中で忘れていた緊張と焦りが少しずつ僕の胸の中に広がっていくのを感じました。
…特に、遊撃を得意とする僕達の部隊にこのような司令が下されることは今までありませんでした。
なので、今回が、初めての守りながらの戦いになるかもしれない。それがなによりも僕を緊張させているのでしょう。
「…午後に一度稽古をつける、会議の後で向かうからそれまでに準備しておけ」
緊張は僕を惑わせたようで、席から立ち上がったお兄様への反応がほんの少し遅れました。
不思議そうに僕を見つめるお兄様の視線に気付き、僕は慌てて壁からコートをおろし、お兄様の背中を目指して駆けました。
「不安か?」
「……少し」
「お前も保護対象も私が守る、安心しろ」
僕の不安を的確に見抜いたお兄様のその言葉はとても頼もしく、その背中もいつもより大きく見えました。
でも…それでもなお…どうして僕の胸には何かが引っかかったままなのでしょうか。
「それでは、いってくる」
「はい、いってらっしゃいませお兄様」
カツン、カツンと小さくなっていく革靴の音を聞きながら僕はしばらく立ち尽くしていました。
考えれば、戦場でも、軍内でも、僕はいつも守られてばかりです。
…僕はいつまで守られているのでしょうか。
今日はお兄様の大きな背中が、普段よりも少しだけ遠く感じました。
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