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模擬剣と模擬剣のぶつかり合う音と滲んだ血と汗の匂いで満たされた東端にある建物。
訓練場に僕は予定よりも少しだけ早く訪れました。
今回の作戦内容の細部は当日まで秘匿されるらしく、作戦書にはおおまかなことしか書かれていませんでした。(そのおかげで識字が苦手な僕でも時間までに読み切れました。)
今作戦の守護対象は軍内部の者ではなく、一般人であること。
輸送先は同盟国の南であること。
対象が輸送中に命を狙われる可能性があり、戦闘になる確率も高いこと。
それとその他必要事項など…。
思い出そうとすると頭が熱くなって、頭からまたプスプスと煙が立ちそうになりました。
なので、僕は一旦頭を切り替えて先に訓練を始めておくことにしました。
僕は壁にかけられた木の剣をとり、感触を確かめから部屋の端でまず動きを確認しました。
戦線から帰ってきてからも訓練をかかさず行ってきたおかげか当時から速さ、力、技術ともに問題は見られませんでした。
でも、今回は暗殺や奇襲である可能性が高く守護対象もいるのでできるだけ速く的確に戦闘を済ませる必要があります。
そのために、突き進むための動きではなくもっと、人を殺すための動きに特化しないと……。
「さっきの動きならもう少し速くできるかな…」
少し上がった息を整えてから、僕は模造剣を握り直し、最適解の動きを探し始めました。
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