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 翌朝、良介が起きるといつも朝食の準備をしてくれる大福の姿はなく、テーブルの上には冷めた食パンとコーヒーが用意されていた。ロフトを見上げると、布団の塊が動いていた。  大福と暮らし始めてから初めての、重たい空気を纏った朝だった。石のように固くなった体と心を抱えて、良介は家を出た。朝起きてから会社に着くまで無言なことは大福が来るまでは普通だったのに、今となってはその感覚を思い出すことができない。  会社に着いて真っ先に漏れたのは溜息だった。 「よっ、昨日はありがとな。おまえのこと無口でクールでミステリアスだって褒めてた子いたぞ。連絡先も交換してるし、うまくいけばおまえも彼女出来るんじゃね?」  朝から元気よく話しかけてきたのは、昨日の同期だった。声を聞くだけで、苛立ちが増す。  悪い奴ではない、こいつが悪いわけではない。  心の中でそう唱えていないと、大福と険悪になった責任を同期に転嫁してしまう。そして心から嫌いになってしまったら、仕事がしにくくなる。 「余計なお世話だ」 「どうした? 機嫌悪くないか? もしかして連絡きたけど失敗したとか? まぁ元気だせって」 「一体誰のせいだと思って……! いや、なんでもない」  良介は声を荒げそうになった。なんとか怒りを抑え込むが、今日はまともに仕事が出来る気がしない。 「おまえがそんな声出すって、何があったんだよ。その言葉気になるから、昼休憩んとき話聞かせろ」  勤務開始のチャイムと共に、同期は自分のデスクへ戻っていった。
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