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いつもの社員食堂ではなく同期行きつけの定食屋で、良介は一連の出来事を同期に話した。誰かに話さなくては、自分のなかでネガティブな感情が爆発してしまいそうだった。
「なるほどな。悪かった。おまえに彼女がいたなんて知らなかった。まさか同棲までしてるとはな。ずっとおまえは飲みに誘ってもたまにしか来ないし、彼女もいない雰囲気だったし、出会いがなくて彼女も友達も出来ないんだったら出会いの場を設けてやろうとかお節介なこと考えてた」
「いや、断りきれなかったのは俺の責任だし。それにおまえは良心でしてくれたことだろ。謝ることない。むしろさっき感情任せに言って悪かった」
味噌汁をすすって、ほぼ同じタイミングで食べ終わった良介と同期は、それ以外は特に何も話すことなくオフィスに戻った。
同期との考え方の違いはお互いに納得できた。あとは、大福との関係をどのように修復していくかだ。
勤務を終えた良介が家に電話を掛けたとき、大福は出なかった。留守電になるだけで、大福の声を聞くことはできなかった。今大福がどのようなテンションでいるのか、良介はどのような顔で帰ればいいのか、少しでも情報が欲しかったのだがそれは叶わなかった。そして、電話に大福が出なかったことはこれが初めてだった。きっと声も聞きたくないほど怒っているということだろう。
帰ってから、どう説明すれば良いのか。
飲み会と称された合コンに参加してしまったことは事実だ。いくら良介の心が動いていないからといって、連絡先を交換し女の子から連絡が来てしまったことも事実なのである。
良介が家に帰る足取りは非常に重たくなった。
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