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 今すぐにでも探しに行きたい。だが、もしかしたら大福は一時的にでも帰宅するかもしれないので、家を出て大福と入れ違いになるのは避けたい。大福に携帯電話を持たせていなかったことを良介は後悔した。  探しに行くことをためらっていると、付けていたテレビからのニュースが耳に飛び込んできた。    ……区の路上で二十代くらいの女性が何者かに腹部を刺される事件が発生しました。犯人は凶器を持ったまま未だ逃走中です。女性は腹部を刺され、病院に搬送されましたが意識不明の重体です。近隣住民によると女性が発見される前に男女が揉めるような声が聞こえたとあったこと、女性の腕には大きなあざがあったことから、男女関係のトラブルの可能性を含めて捜査が進められています。  ニュースの言う地名は、良介の住んでいる地区だった。  腕におおきなあざのある二十代くらいの女性。  未だに帰ってこない大福。  この二者が同一人物ではないといえる根拠などどこにもない。  大福……!  堪えきれずに部屋を飛び出そうと扉に手を掛けたとき、扉は良介が押す前に開いた。勢いを殺せずに良介は前につんのめり、何か弾力性のあるものにぶつかった。
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