3.自称・写真家の遺品

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「専門家に聞いているところだ。俺の料理の写真の権利はもらっておきたいなと思って……。ほんとうに、毎日、欠かさずに……。どうするんだよ、これから。けっこう、頼っていた……店の接客も……」  料理人で頑固な父が、娘の目の前にかかわらず、すすり泣いた。  家族の話もでてこない。盆正月も帰省しない。だから、秀星はいつも十和田家と過ごしていた。  父もいつのまにか弟分になっていたようで、ふたりでおいしいものを探求するドライブにだって頻繁に出かけていた。  彼の突然の死に、葉子以上に父が打撃を受けている。 「このデータ。私が大事に保管しておくね。見るだけならいいよね」 「父さん、こういうデータとかよくわからないから、そこは葉子、頼む。見るだけならいいだろう」 「権利がどうなるのか、わかったら教えて」  父が弁護士を通して間違いがないよう、秀星の遺品に細心の注意を払って引き取ろうとしていてる。  きっと。どこかで、もう家族のような人になっていたのだと、いまになって親子で感じて、心を痛めている。  哀しくてしかたがないのは葉子も一緒だった。  彼が事務仕事をしていた小部屋で、彼が遺したノートパソコンに保存されていた写真データを葉子は眺める。  父の毎日の料理に、大沼と駒ヶ岳の四季折々の写真、森でみかけたオオウバユリの開花写真や、エゾリスにシマエナガなどの野生動物の写真も。
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