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その日からハコは、秀星のSNSアカウントを追悼アカウントとして遺し、自分のアカウントで詳細を説明した後、写真をおなじ日付に合わせてアップしていった。
ハコの動画配信から、ハコが唄った曲名を記録してきたSNSから、それまでのフォロワーが閲覧しにやってくるようになった。
逝去した上司の作品を引き継ぐ唄い手『ハコ』
亡き男性が遺した自然の美しさと、彼女の声がリンクしネット上で盛況
そんなふうに広まっていく。
でもハコはこれを成功とは思っていない。
もう東京にはいかない。ここで生きていく。
「秀星さん、私、知ってるよ。こうしてたくさんの人に見られるためじゃなかったよね」
僕は、大沼で見られる景色がぜーんぶほしいんだ。
ほんっとに美しいんだよ。宝石を手に入れたと言えばわかってくれる?
最後の写真は連写されていて、続けて並べると、吹雪いていたところから、すっと雪が少なくなり、夜空が明け、駒ヶ岳と湖面が薄紫に染まり、湖面に星が映りそうな雪開けだった。
険しい吹雪から、ふっと現れる美しい静寂。
世知辛い世の中を生きてきた彼が体感したかった瞬間だったのではないだろうか。
これをずっと見つめていたんだ。
死んでもほしいもの、見ていたいものはこれだったに違いない。
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