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1.さよなら、ルミナリエ
いつものことだが、辞めるというとオーナーに驚かれる。
「辞める!? 何故、写真のためなのか」
「はい、そうです」
レストランオーナーである社長が面食らったまま、口を開けて言葉を失っていた。
だがこの方もわかっているから、余計に驚いているのだと秀星も理解していた。
「申し訳ありません。四年間、お世話になりました」
「いや、……写真が第一だとは聞いていたし、趣味……いや、頑張っていることも知っていたよ。でもな、そのために働いていたんだろう。ここを続けながら、写真を撮っていたほうが生活ができるだろう」
「そうしますと、なかなか北海道には行けませんので。今回、思い切って決意をいたした次第です」
「はあ……、そう……か」
社長室のデスクに悠然と座っていた彼が項垂れている。そして唸っている。
いつか写真のためにここを辞めるかもしれないことは伝えていたから『その時がきた』と思っているのだろう。
「代わりにと言ってはいけないかもしれませんが、篠田がもうメートル・ドテルを任せられるかと思います。年齢的にもこれからキャリアを積んでいくのによい頃合いかと思います」
また社長が唸っている……。
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