24. 北星秀・写真集 『エゴイスト』

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ーーーーーーーーーーーーーーーーーー 北星秀 仕事 ーーーーーーーーーーーーーーーーーー 『クレープフランベ』 撮影:篠田 蒼 (北星がフランベする姿を斜め後ろから。すこし白髪交じり、うつむいている顔がなつかしい) この背中と手と目線を、いつも追っていた。 いまも越えられない。越えられないまま、先輩は逝ってしまった。 でも、彼が教えてくれたことは、逝去したからこそ、深く深く刻まれている。 静かに仕事に徹するこの男の奥に、一気に燃え尽きることができる炎が常に宿っていたのだと、後になって知る――。 (ダラシーノ 篠田 蒼) 『お客様に料理をお届けしているメートル・ドテル』撮影:篠田 蒼 フレンチを経営する者として、惜しい人材をなくしたといまも思っています。彼が北海道へ移住するために退職届を提出してきた日をいまも思い出す。 どんなに引き留めても彼の決意は変わらなかった。 仕事は一流である彼が愛する写真は趣味程度だと思っていたので、給仕のほうが天職では――と伝えたことがある。 彼の返答は『天職じゃないんです。僕の欲望のための仕事なのです』だった。 この意味が、彼が逝去したいまになってわかり、彼の生き様がどこを重きとしたのか知ることになった。 写真というものに取り憑かれた男が、その写真で生き抜くため、支えるため、欲望を満たすために、仕事も極めていた。それだけのことだった。だが最高の仕事をしていた男でもある。 (矢嶋シャンテグループ 社長 矢嶋 稔)
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