1.さよなら、ルミナリエ

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「そうだな。よく仕込んでくれたと思ってる。育ててくれて……。いや……、なかなか、下の者にその地位を譲れるもんじゃない。こういうときは、下の者がその地位を与えてくれるところへ転職していくもんだよ。あるいは君のような男なら、他の店に引き抜かれて行くもんだ」 「この仕事は続けるつもりです。生きていくことができませんので」 「だったら……」 「ですが。今後は北海道で暮らしていきます。それが念願でした……。両親も看取りましたし、法事なども落ち着きました。家族はなく、もう自分しかいません。篠田に任せられると思ったのも決意することができたひとつです」  つまり秀星は身軽になってしまったのだ。それが拍車をかけた。あとは仕事をきちんと始末して発つことをすれば、念願の北海道住まいをすることができるようになったのだ。  社長が震えた息を吐いたのを聞く――。 「休みを与えると言ったら? 十日でも半月でも……」  引き留めてくれているとわかっている。有り難い申し出だが、特例は真面目に働いている他スタッフにとっても、良くない影響を運んでくるきっかけともなり得る。  だから秀星はきっぱりと伝える。 「北海道で生活をすることが、次の写真活動でやりたいことなのです。申し訳ありません」  眼を長く伏せ、彼がやっと決意してくれる。
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