1150人が本棚に入れています
本棚に追加
「わかった。……後釜もきちんと置いていってくれる責任も果たしてくれている。でも、惜しいよ。もちろん、写真も応援している。気が済むまでやって、また神戸に戻ってくるなら声をかけてくれ。力になるよ」
「ありがとうございます。そして、お世話になりました。たくさん我が儘を聞いていただきました。感謝しております」
「すべて、責任をもってやってくれたからだ。そのうえで、写真をやっていたからだよ。むしろ、ギャルソンのほうが本職で天職だと俺は思っているくらいだよ」
天職じゃないんです。僕の欲望のための仕事なのです。
それすらも秀星は躊躇わず社長に告げた。
かわらぬ決意に社長もなにも言わなくなった。
スタッフに退職することを知らせた日のこと。
その夜の仕事が終わり、ロッカーでギャルソンの制服から私服に着替えていると、その篠田が食ってかかってきた。
「はあ? 北海道に住みたいから辞めるってバカなんですか、嘘ですよね!? おかしいですよ、絶対に!」
篠田は自分より少し年下、この店で出会ったギャルソンの後輩だった。
熱血漢で意識が高く、そばにいる目上の秀星には、いつも食ってかかってくる。
そんな熱い男に対して、秀星はいつもしらっと単調に流す。
「そうだよ。前から言っていただろ。僕は写真で生きているから、そのうちにここも辞めるかもしれないよと」
最初のコメントを投稿しよう!