2.お土産は二階堂

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 その写真集を見ただけで蒼が再度背筋を伸ばして、ご老人へとやっといつもの微笑みを優雅に浮かべた。 「遠いところからのご来店、ありがとうございます。お一人様でよろしかったでしょうか」 「はい。一人です」  受けちゃった。いまは予約分しか受け入れていないのに、予約なしのお客様を受け入れちゃった。  葉子は内心唖然としていたが、少し姿勢を崩したように見えた蒼が、キリッと持ち直したので、葉子もいつもの仕事の姿勢へと正す。 「十和田さん、カウンターまでお願いいたします」 「はい。いらっしゃいませ、どうぞ、こちらでお荷物をお預かりいたします」 「あなたが、葉子さん。ハコさんですね」  ああ、視聴者さんの飛び込みかなと葉子は思ったが、いつもの笑顔で応える。 「はい。北星秀の写真集をお持ちくださって、ありがとうございます。動画配信では『ハコ』の、十和田葉子です」 「ありがとうね。秀星の写真をここまでにしてくれて」  え……。葉子は驚き、目を見開きながら、ご老人のお顔を見上げてしまった。  最後、本名を明かしていないのは、亡くなった秀星だけ。彼の名は『北星秀』としてしか知られていないのだから。どうしてこの方が?  秀星の関係者? だったら蒼にも関係者?  葉子が茫然とした隙に、お客様から蒼が控えるカウンターへと向かってしまった。  ペンを握った蒼が、お客様と向き合う。 「……北星の写真集をお持ちくださって、ありがとうございます。受付をさせてください。お名前を伺ってもよろしいでしょうか」 「甲斐(かい)です。甲斐の国のカイです」 「ありがとうございます。ご連絡先も教えていただけますでしょうか」 「090……」
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