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2.プロじゃない写真家が言うこと
「ハコちゃん、ちょっとおいで」
ディナーを終えて、深夜手前でやっと仕事が終わる。
そこで父が明日の仕込みの点検をしているところを目を盗むようにして、秀星に手招きをされる。
連れて行かれるところは、地下にある小さなワインカーブだった。
「飲んでごらん。貴腐ブドウのワイン。2004年、小樽産だ」
とろりとしているシロップのような白ワインを、小ぶりのアペリティフグラスに注いで手渡される。
そこで一口含み、葉子はテイスティングをする。
「甘い!」
「それが貴腐ブドウの特徴だ。でも、このボトルには……」
彼が見せてくれたボトルには『辛口』とある。
「もう一度、口に含んでよく感じてごらん」
彼に言われ、葉子も素直にもう一度口に含む。
「甘い梅酒のよう、でも、甘ったるくない、スッキリした……うん、すぐに甘みが消えキレがあります」
「そう。すぐに鼻孔にくる香りの高さと甘み、でもそれがすぐに去るスッキリした切れ味が特徴。その後味をしっかり覚えておいて」
少しずつワインの味も教えてくれるようになった。
そのカーブには、立ち飲み用の小さなテーブルもあって、そこにちょっとしたおつまみのように、本日残った料理なども小皿で持ち込まれたりしていた。
焼いた肉、ハム、果物、チーズ、残りのワインをもらって、食材との組み合わせも体験させてくれた。
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