37.僕がいなくても大丈夫

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 ゆったりとした休暇で英気を養えたのか、すっきりしたお顔で戻って来たと葉子には感じられた。こうして、たまに身体を休めて働くことが、この年代の方には必要だと痛感した瞬間でもあった。  お土産は、また二階堂。お師匠さんが『葉子さんのための吉四六(きっちょむ)』と笑いながら手渡してくれた。実はあのあと葉子が実家に帰ると、仏壇に供えられていた『二階堂・吉四六』を父が呑んでしまっていたのだ。  それを知った甲斐チーフが『では、次は葉子さんのために持ってきますね』と約束してくれていた。 「嬉しいです。ほんとうに、すみません。飲んべえの父で」 「秀星と語りながら呑んだとおっしゃっていたので、致し方なかったかもしれないですね」 「もともと、秀星さんのために持ってきてくださったものだったので。それはそれで、良かったと思っています。いただきます。楽しみです!」 「ソムリエはワイン以外のアルコールも熟知していなくてはなりませんからね。これからもお土産はアルコールにしましょうかね」  甲斐チーフが選んでくれるならば、きっと勉強になるものだろうと、葉子も期待で胸を膨らませる。 「楽しみです!」 「次回、葉子さんのお土産にしたいアルコールはですね。宿題にしましょう」 「え、宿題!?」  また急に来たと、葉子は喜びから反転、ギョッとした。 「サンタ・マリア・ノヴェッラのアルコールについてお勉強してください」 「サンタ・マリア……?」  まったく知らない名前が出てきた。響き的にイタリア? イタリアのお酒?  それを聞いた蒼が『ああ、なーるほど』と、師匠の出題に感嘆のため息を漏らした。 「俺が買ってあげたくなっちゃうじゃないですかあ」
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