37.僕がいなくても大丈夫

5/5
前へ
/595ページ
次へ
「夫の篠田が買うなら、フレグランスにしておけ」 「わ、師匠からヒントを言っちゃったよ。葉子ちゃん、メモしておきな!」  お酒にフレグランス??  うん。心にメモをして、あとでまた調べようと葉子は心得る。 「俺だったら、ローザにしちゃうなあ。チョコレートも捨てがたいな」 「篠田らしい、ロマンチックなチョイスだな。では、私は伝統のアックアを探すかな」 「札幌まで行くんですか~。阪神だと大阪に行かないと」 「福岡にあるんだなこれが」  大沼ではすぐには手に入らないとわかった。  それも葉子は心の中のメモにしておいた。 「お喋りはそれぐらいにしてだな。給仕長、こちら、矢嶋社長から預かったものです」  手に持ったままになっていたクリアファイルが、蒼へと手渡された。  履歴書のような書類がちらっと葉子の目を(かす)めていく。  蒼がそれを受け取り、挟まれている書類を抜き取り、眺めた。 「え、西園寺君に決定なんですか!」  西園寺(さいおんじ)……。  葉子の次の上司の名が明かされる。蒼も知っている矢嶋シャンテの従業員らしい。 「年齢的にも、経歴も、希望動機も、家庭の事情も含めて、彼が適任。矢嶋社長と私の意見が一致したソムリエです」  だが蒼がうーんと唸っている。  蒼君にとっては、やりにくい人? 葉子の心はドキドキと大騒ぎ。 「サイボーグ君が来るのかー。そうかー」  サイボーグ君……?  いったい、どんな人!?  そのネーミングだけで、葉子は震え上がった。
/595ページ

最初のコメントを投稿しよう!

1139人が本棚に入れています
本棚に追加