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「夫の篠田が買うなら、フレグランスにしておけ」
「わ、師匠からヒントを言っちゃったよ。葉子ちゃん、メモしておきな!」
お酒にフレグランス??
うん。心にメモをして、あとでまた調べようと葉子は心得る。
「俺だったら、ローザにしちゃうなあ。チョコレートも捨てがたいな」
「篠田らしい、ロマンチックなチョイスだな。では、私は伝統のアックアを探すかな」
「札幌まで行くんですか~。阪神だと大阪に行かないと」
「福岡にあるんだなこれが」
大沼ではすぐには手に入らないとわかった。
それも葉子は心の中のメモにしておいた。
「お喋りはそれぐらいにしてだな。給仕長、こちら、矢嶋社長から預かったものです」
手に持ったままになっていたクリアファイルが、蒼へと手渡された。
履歴書のような書類がちらっと葉子の目を掠めていく。
蒼がそれを受け取り、挟まれている書類を抜き取り、眺めた。
「え、西園寺君に決定なんですか!」
西園寺……。
葉子の次の上司の名が明かされる。蒼も知っている矢嶋シャンテの従業員らしい。
「年齢的にも、経歴も、希望動機も、家庭の事情も含めて、彼が適任。矢嶋社長と私の意見が一致したソムリエです」
だが蒼がうーんと唸っている。
蒼君にとっては、やりにくい人? 葉子の心はドキドキと大騒ぎ。
「サイボーグ君が来るのかー。そうかー」
サイボーグ君……?
いったい、どんな人!?
そのネーミングだけで、葉子は震え上がった。
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