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「三歳の息子さんが、あんまり丈夫ではないようなんだよ。喘息ってやつかな。環境を変えてみたいということだった。特に北海道の大沼なら自然も多いようだから、ここで子育てをしてみたいとのことだった」
「そういえば。俺が神戸を出て行く時は、まだ産まれたばかりでしたね。そうですか。その時の赤ちゃんが……。わかりました。奥様もそのつもりなんですね」
「奥様が乗り気だったそうだよ。函館や北斗市も近いから、車さえあれば不自由でもない都市近郊で、自然もある。あと、ここのレストランの雰囲気も神戸で聞き及んでいたのだろう。実家とも疎遠らしくてね……。奥様のワンオペ子育てで彼も気に病んでいたそうだから。いや、私もここで随分甘やかしてもらって、そうしてくれと言っているわけではないんだが……。その、」
甲斐チーフが言いたいこと、それは葉子にも蒼にもわかったので、そこは夫妻で顔を見合わせて頷く。
「大丈夫ですよ。西園寺君には、安心して来るように伝えてください」
「私も母と気にかけておきます。お子様、元気になられるといいですね」
「そうですか。そう聞いて安心いたしました。矢嶋社長にもそのように篠田から伝えてもらえるかな」
「了解です。住居とかも、俺がピックアップしておきますよ」
「そうか。助かる」
若いファミリーが『フレンチ十和田』にやってくるということだった。
どうやら家族思いのパパさんでもあるようで、葉子はさらに安心することが出来た。
ただ、サイボーグ部分が気になるけれど。それはもう対面してからだ。
「西園寺君もチーフになるからね。葉子ちゃん、そのつもりで」
「はい。もちろんです」
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