41.星の薫り

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 どちらも既婚者であるのに心配らしい? 美しい佇まいに魅せられはしたけれど、それは仕事をしている男としてのこと。 「私の夜空にね。ずうっと沈まないお星様があるの。そこにいるの、秀星さんと、蒼君、そして甲斐チーフ。この三人以外の男は、いまのところ入る余地はありませんから」 「星……三つ? ちょーっと待って。ねえねえ、葉子ちゃん、三つ並んじゃっているんだ。俺以外に、二つも!! っていうかさ。そこにパパもいれてあげなくちゃまずいんじゃないの? ねえねえ」 「私が愛したい男としては、最高のてっぺんに輝いています。代わりはいません。絶対に、これからも、ずっと。毎日、どの星よりもキラキラと輝いています。それはもうナンバーワン。ですから、もうよろしいですか給仕長」 「うん……、えっとわかった。いいよ。えへへ。ナンバーワンなのね、その星の輝き」  ちょっと離れたところにいる江藤君が、背中を向けているのに肩を揺らして笑いを堪えているのがわかった。   ✿・✿・✿  ディナータイム開始、フレンチ十和田の扉が開く。 「いらっしゃいませ。ご来店、ありがとうございます」  エントランスにて優雅な身のこなしでお客様を出迎えるメートル・ドテルの蒼。 「最初のお客様、入られます。アペリティフお願いします」  蒼と共にホールを取り仕切ってくれるシェフ・ド・ランの神楽君が、厨房にやってくる。 「石田、鳥居、アミューズの仕上げいくぞ」 「ウィー、シェフ」  白いコックコートの父が奏でるひと皿が、今夜のお客様の彩りとなりますように。
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