2.プロじゃない写真家が言うこと

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 食材の産地、生産者の顔に想いまで、彼は仕入れてきて語ってくれる。  本当はこの仕事が好きなんじゃないかと葉子は思い始めていた。  でも違った。 「全部、僕が撮る写真に繋がることだからね。表面だけ見えても写真にならないよ」  ――と、如何にも写真家らしいことを言うのだ。  ほんとうにそのように思えてしまうし、でも、彼は自称・写真家であってプロではない。  でも。葉子はだんだんとわからなくなってくる。  『○○家』てなに? プロってなに?  自分はプロじゃないけれど、写真家になりたいから頑張っているという人が、この仕事も写真家のうちのひとつだからと、部下まで懸命に育ててくれるのだから。  でも一理あると、葉子も思うようになった。  唄だっておなじじゃないか? 世の中にある様々なものに思いを馳せること、まず自分が生きることに一生懸命になること。そこから歌詞が声が表現が生きてくるのではないか?  でも。あの人、プロじゃない。  でも。言ってることわかる、なんでだろう?  もう二十代も後半が目の前になって焦っているのに、諦めきれない辛い日々だと思っていた。  でも、ハコも始めた。都市部に通うボイスレッスンと、ジョギングと、発声練習。  無駄じゃない。いや、やりたいんだ。いや、捨てられないからやるんだ。やりたいからやるんだ。
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