2.プロじゃない写真家が言うこと

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 早朝、湖畔の森林道を走っていると、秀星の撮影ポイントにでくわす。 「ハコちゃん! おはよう!」  撮影用の三脚にカメラをセットして、いつもおなじ場所、ほぼおなじ時間に撮影をしている。  雨の日も雪の日も、よほどに悪天候でなければそこにいる。  休暇も森林散策道のカットをいくつも撮影している。彼の日課でルーティンだった。  それを見習った葉子のルーティンがジョギングと発声練習だった。  彼の撮影ポイントから少し離れた散策道奥にある湖畔東屋のあたりで、ひっそりとやっている。  それでも撮影を終えた彼がカメラを担いで、葉子ところまで歩いてやってくることもしばしば。 「いい声が出ていたね。あっちまで聞こえてきたよ。なにか唄ってよ」 「やだ。恥ずかしいですよ……。あ、今日の写真、見せてください」  彼が嬉しそうに微笑む瞬間だった。  東屋で彼がその日に撮影した写真データを一緒に眺める。  朝日に染まる駒ヶ岳の茜の山肌に、薄紫に凪いでいる大沼と小沼、漂う小島の木々も霧をうっすらと纏っていて、しっとりと美しい春先の姿だった。 「毎日、飽きないんですね」 「一日たりともおなじ姿などないよ。大沼は特にいろいろな表情を見せるね。飽きないね。僕はね、この大沼の姿をぜんぶ見たいし、欲しいんだ」  やっぱり。変わった人だなと思っている。
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