【4】僕は天使?

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【4】僕は天使?

<前編> 「リオーン、支度できてる?」 「ん、何を着たらいいのかわからない」 ずーっと、籠って曲を作ってた。 イスエンが終わってから、プレサン(プレスト・サンク)のアルバムの曲だと思えば時間なんか忘れてしまっていた。 「そういうと思って、服を持ってきたわ。コレにしなさい」 とーちゃんのジムショのしゃちょーやってるミカミさんが迎えに来た。 子供の頃から何かあると来てくれて、とても頼りになるんだ。  服を着たら、目を大きくして笑った。 「やっぱり、似合うわぁ、可愛い💓 私の目に狂いはないわ」 「カワイイの? 僕カッコいいのがイイ」 「あら、言葉が足りなかったわね。ごめんなさい。カッコカワイイのよ💓 これでどんな相手もイチコロよ!」 「イチコロって、僕のこと好きになるってこと? 誰でも?」 「もちろんよ! リオンのこと好きにならないわけないじゃない! 今日はイスエンのニューアルバムの発表も兼ねてるからずっと一緒にいてられないけど、大丈夫かな?」 「ん、大丈夫、とーちゃんのお友達がずっと一緒にいてくれるって、とーちゃんが言ってた」 「あら? どのお友達かしら?」 「じぎー」 「ふぅん、久遠にしてはなかなか良い選択だわ。私、あの子好きよ」 「僕も煩くなくて好き」 「ずーっと一緒にいてくれるのよね?」 「うん、多分」 「楽しみだわー! リオンとジギー!  似合うわ、似合うわ、美しいわ、美しいわ、萌だわ、写真撮るように言っとかないと」 何だかよくわからないけど、ニコニコして早口になってる。 ジギーは今までも何度か家に来てたから顔は知ってた。でも、話すことなんてなかったから最近まで名前も知らなかった。 なんでか、急にとーちゃんがジギーを連れてきて、相談事があったら聞けっていうんだ。 何も相談したいことなんてないのに。 だけど、時々、ケーキとか持って家にやって来てカモミールを煎れてくれる。 ジギーは僕に何も聞かないし、僕も何も聞かないから、静かなティータイムになる。 だけど、お茶を飲んでからだと、仕事も捗るし、なんだか落ち着くから、ジギーが家にいても変な感じ(異物感)はしなくなった。 何回目だろう、僕が曲を書いてる時に、 “それ、いいね” って、ジギーがぽつりと言った。 ジギーは日本語が上手なのに僕としゃべるときは英語になる。 それから、少しずつ話をするようになって、この前は一緒に服を買いに行った。 だって、いつもジギーらしい服を来てるんだけど、それはどこに行っても売ってないんだ。すごくカッコよくって、みのりんに着せたいと思った。 聞いたら、行きつけのブティックやセレクトショップがあるんだって。 連れてってくれたセレクトショップに入った途端、頭の中で曲が溢れてきて止まらなくなって、訳がわからなくなった。で、気がついたら家にいた。ジギーが連れて帰ってくれたらしい。 なんだかちょっと安心した。 小さい頃から、知らないうちに、知らない人に手を繋がれてて、知らない場所に連れて行かれてたりして、ケーサツカン連れたとーちゃんやミカミさんが怖い顔して迎えに来ることが何度もあったんだ。 でも、ジギーと一緒なら大丈夫だ。きっと家に連れて帰ってくれるから。 会場に着いたけど、時間が早いらしくて、招待客はいなかった。 ジギーもまだ来てなかった。 仕方ないから、ステージの上で設置されている楽器や機材を見てた。 気がついたら、なんか何人もの男の人が来たけど、何を言ってるのかわかんなかった。 そうしたら、派手な格好したとーちゃんが来て「ジギーが来るのが遅れてる」って「もう少し一人で待てるか?」って言ったから、頷いた。 設置されてるピアノに座って、成瀬翠(ミドリンジャー)が弾いてた幻想即興曲を弾いた。 ピアノの音の一つ一つがシャボン玉のようにまぁるい玉になって、僕の周りに溢れて気持ちが良くなってきて、適当に思い出した曲を弾いた。気がついたら、ジギーが隣にいた。なんか知らないけど、周りの人がみんなスマホこっちに向けてて、気持ち悪かった。 ”ごめんね。もう直ぐ始まるみたいだから、向こう行こうか?” 手を引かれて、会場に設置されてるバーカウンターの椅子に二人で並んで座った。 そこでも、いろんな人が近寄ってきて、何か言ってるけどよくわかんなかった。 ジギーからジュースをもらって飲んでいると、目の前にブルーがいた?! 「君、どこか事務所に所属してるの?」 「ジムショ?」 「僕のこと、知ってる?」 っていうから頷いた。 「ナンパ?」 ジギーがいつも聞かないような低い声でブルーに向かって言った。 「いや、どこにも入ってないなら、うちの事務所に……」 ブルーが何か続けて話してるけど、僕の目には会場に入ってきたばかりの人に全集中してしまって、もう何も聞こえなくなった。 僕に向かって(頭の中で)歌って踊るみのりんが僕の前に一歩ずつ近寄ってくる。ジギーの心配そうな声がした。 “どうしたの?” ”彼が、彼がいるんだ” 「ねぇ、あの人と同じグループなんだよね? 彼、連れてきてくれない?」 「え? (みのり)を? ダメだ。ダメだ。あいつ気が利かないから」 「連れてきてくれたら、この子の名前教えてあげるよ?」 「……、いやっ、いいよ。その()の名前なら、他の人に聞くから」 気がつくといつの間にか、ブルーがいない。 でも、そんなのどーでもいい! みのりんが同じ空間にいるだけで、この世界に色が付いていく。 ふわふわした気分になる。耳元で囁くように聞かれる。 ”彼にアピールしたい?” ”え? アピール?” ”彼に見つめて欲しい?” ”うん! 方法があるの?” ”この前、弾いてた曲、あれをあなたのために捧げますって言って弾いてくれたら、俺は嬉しいけどね” ”うん! やる! できる!” どんどん、パーティは進んでいって、多くのミュージシャンが演奏していった。一曲毎に歓声や喝采が上がってホール内は盛り上がっている。 「他に、やる奴はいねーか?」 ステージからの呼びかけに、ジギーが手を上げた。
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