電脳かまいたち

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『警察にも医者にも解決できない』 そう断じられた事に、そしてその強い意志に押し切られてしまい、誠二郎は結局、自宅まで鏑井を案内していた。 きっとあの妙な説得力を感じてしまう意思の強さが、人をたやすく丸め込むのに一役買っている。そして、それに逆らえない己の意思の弱さに、誠二郎はほとほと嫌になっていた。 もし自分にあれくらいの意思の強さがあればこんなことにはならなかったんじゃないか? 妹は引きこもらなかったんじゃないか? そう考えてしまう。 いや、本当は誠二郎にも分かっている。これは無い物ねだりで、全ては論じる価値すらないことだと。 ……それでも求め、後悔してしまうのだ。 「それで、俺らは何を待ってんです?」 ほとんど投げやりになりながら誠二郎が問いかけた。 二人は今、嘉数宅の前で立ち尽くしている。それは鏑井が「少し待って欲しい」と言ったからだった。 「もうすぐ……いや、ちょうど来ましたよ」 そう答えた鏑井の視線の先に人影が二つ並んでいた。どちらも小さい。よくて中学生くらいだ。 片方はフードを被っていて顔がよく見えないが、長い髪が横から垂れている。女の子のようだ。 もう一つの影は、背格好は女の子と同じくらいだがフードはしていないため顔がよく見える。不機嫌さを隠そうともしない男の子だった。 「では行きましょう」 「ちょ、ちょっと待って! あの子らも入るのか!? 聞いてないぞ!」 「え? 僕はずっと言ってましたよね? 『の領分だ』って」 「な!? い、いや、確かに言ってたが……!」 誠二郎が言葉に詰まる。確かに誠二郎は自宅に入る人数は確認していないし、鏑井は一人だとも明言していない。本人の言う通り、鏑井はずっと『僕ら』と発言していたし、誠二郎はそのことに言及しなかった。 だからと言って事前になんの説明もしていない人物をいきなり現地に召喚するのが許されるだろうか。それはもはや詐欺師の手口だ。 「本気で妹さんを助けたいと思うなら、許容してください。必要な子達ですから」 そんな子供に何ができるのかと怒鳴りたかったが、声が出せなくなる。 鏑井だけではない。突然現れた二人の子供の視線までもが、覚悟を決めているかのように何かを見据えていた。 『警察にも医者にも解決できない』 あの言葉が誠二郎の中でリフレインする。 警察にも、医者にも、もちろん誠二郎にも解決できない。 けれど、もしかしたらと考えてしまう。何かを分かっているかのような、この目をした人たちなら、あるいはと。 「……妹に手を出したら許さないからな」 誠二郎は沸騰しそうになる頭を押さえつけ、せめて妹だけは守ると、何があろうとこれ以上傷つけさせないと、そう心に誓い、自ら、家の扉を開けた。
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