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【1】
トマト甘酒が入ったグラスがゆらゆら揺れている。
いや、違うな。
揺れてるのはあたしの眼球の方だ。
これは……かなりヤバい時の症状だ。
どうにかしないと。
ズキン。
押し寄せる黒い波。
目の前が、真っ暗になっていく。
どうにか、どうにか。
「……で、どうかな。良かったら、付き合ってほしいんだけど」
もう、ホントになんでこうなるの。
ズキン。
「これでもいきなりじゃないんだ。ずっと前から君の事見てて。それで」
ああ、もうダメだ。
限界だああ。クソッ。
違う、ダメだ負けるな。
こんなこと人生で二度とないかもしれない。
いーや、しかしな。
というかこれじゃ何にも考えられんわ。
そうだ、思考を変えろ!
アスペルギルス・オリゼー、アスペルギルス・ソーヤ、アスペルギルス・リュウキュウエンシス、アスペルギルス・カワチ……。
「ねえ、聴いてる?稲瀬さん。全然こっち向いてくれないけど……その、ダメなのかな」
「えっ、いやそのあのその、ちょ、ちょっと待ってくださ……と、うっ!」
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