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「どうしたの?顔色悪いよ、稲瀬さん……」 「え、と……その」  誰かが頭の中で絶叫してるみたいだ。  ズキン、ズキン、ズキン。    物心ついた時からいつもこれだ。  市販のどんな鎮痛剤でも治らない頭痛。 「大丈夫?」  アスペルギルス・オリゼー、アスペルギルス・ソーヤ、アスペルギルス・リュウキュウエンシス、アスペルギルス・カワチ………。  そうそう、思考をずらせ。他のことに気を散らせ。  何も考えるな。無になれ、無に。 「稲瀬さんってば」  震える手の甲の上に被さる、大きな筋ばった手のひら。ぎゅっと、掴まれる。 「わっ……うぐっ!」  ズキ―――――――――――ン!  まるで、脳天に釘。 「うわあああああああああ―――――っ!」 「いっ、稲瀬さんっ?」 「ああああっ!やっぱダメ―――ッ!無理ぃぃぃっ!」
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