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「俺、冷え性なんだよね」
そう言った雨野は私に手を差し出してきた。
「へぇ?興味ないけど」
「ほんと、伊井って素直じゃないよね」
そう言って、ふっと鼻で笑って手を引っ込める。
そんなこと、言われなくてもわかってる。
本当は、その節くれだった、綺麗な手に触れてみたかった。
いろんな女に触れてきた、その手に私も触れられてみたかった。
誰にも靡かない、冷たいあなたの気を引きたかった。
「いい加減、俺に触れられてみたくない?」
隠していたはず欲望を目敏く見つけて、引っ込めた手を伸ばしてくる。
「あ、まの」
「陸って呼んでよ」
そう言って、冷たい指先が私の頬をなぞった。
fin
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