第6章

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 魔法少女として真面目過ぎるでもなく、また軽視するでもなく、至って普通の少女。それでいて戦いでは芯の通った強い一面を見せる少女。今までに出会った魔法少女とはまるで違う少女。  当初の不安は既に消えていた。この子たちなら多分上手くやっていけるだろう。ただ、それ以上を目指すには三人が共に成長していく必要がある。例えフェザリアがヴァルキリーと成り得る力を手に入れたとしても、他の二人が並みの強さではより強いフィジカルボディとの戦闘は難しいのだ。また、力の差は劣等感を生みやすく、関係を悪化させていくことにも成り兼ねないのだ。結果、劣等感に苛まれた者は自ら立場を放棄するのだ。これは、アテーネ自身が何度も目にしてきたことでもあった。しかし、フェザリア、パトリシア、メガイヤは今までとは違う色を持っている。これは三人の関係性を見ていてそう感じるのだ。不必要に仲良く演じる今までの魔法少女たちとは全く違って見えたのだ。三人がこれからの戦いでどのような未来を迎えるのかは全くもって分かるはずもないが、アテーネにはたったひとつ思えることがあった。  アテーネはマジック・モニターに興じる綾莉を見つめる。その頼りなさ感溢れる姿はアテーネに自然と笑みをもたらしていた。 「どうしたの? 何かニヤニヤして気持ち悪いよ」 「綾莉ちゃんは綾莉ちゃんのままで居てね」 「……」  アテーネは首を捻る綾莉に向けてもう一度微笑んだ。それは人の姿で良かったと思える瞬間だった。 「敵だ!」  地球がステート・リテンションに包まれる。  綾莉はフェザリアに変身する。同時にタイニーフォンへの新着メッセージを知らせる音が二度連続して鳴り響く。フェザリアはタイニーフォンを呼び出すと、隙かさずポンポンポンと文字を入力し送信する。 「フェザリア! 敵が来ているというのに何をしてるの」  フェザリアはスマートフォンの画面をアテーネに見せ付ける。  アテーネは思わず微笑む。画面にはパトリシア、メガイヤ、フェザリアの同じ投稿内容のメッセージが連なっていた。 「ほら、三人揃って”マジクなう”だよ!」  フェザリアは叫び、そして飛び立っていった。  どのような未来が待ち受けようが、それはきっと笑顔で締めくくられる結末に違いない。  それが何の根拠もなく無責任に思い描いたものであったとしても。
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