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第1章
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「ママっ!! どうして起こしてくれなかったの!!」
パジャマ姿の少女は髪を振り乱しながら叫んでいる。それでも、テーブルに並べられた美味しそうな朝食を目の当たりにすると怒り混じりの寝不足気味の表情も徐々に和らいでいく。
「何度も起こしたでしょ。その度に『もう一口、もう一口』って変なこと言ってたわよ。ほら、顔洗ってきなさい。ヨダレの跡が付いてるわよ」
少女は口元を押さえ、バタバタバタと洗面所へ走っていく。そしてドタドタドタと二階へ駆け上がり、しばらくしてトントントンと階段を駆け下りてくる。着替えを済ませ、長めの髪を無造作に束ね、淡いピンクのランドセルを背負い、そしてダイニングへと駆け込んでいく。
「もう、その髪どうにかならないの? 結ぶにしても、もう少し綺麗にまとめなさい」
「時間が無いのっ」
「ほら、朝ご飯食べなさい」
「遅刻しちゃうから、もういいっ」
少女は玉子焼きをポンポンと口いっぱいに頬張り、ダイニング、そして玄関を元気に飛び出していく。
少女の名前は天城綾莉。明るく活発な小学五年生。自称、花も恥じらう乙女である。
綾莉は学校へと向かう途中、昨晩のうちに植え付けられた奇妙な記憶を思い返していた。
「……やっぱり、どう考えても夢だよね。フクロウが喋るわけないし。ていうか、あんなまん丸の風船フクロウなんているわけないよ。うん、いるわけない」
自身に言い聞かせるように言葉を口に出していた。
「そうですねホーホー」
「やっぱり、そうよねっ」
「少々デフォルメが過ぎますが、正確にはコキンメフクロウを模したヌイグルミなんですよホーホー」
「へーそうなんだー……ホッ? ホォー!?」
綾莉は耳元でパタパタと空を飛ぶ丸い物体に慄き飛び退いていた。
「女神の従者としては有名なんですよホーホー」
綾莉の頭の中では瞬間的に昨晩の出来事が駆け巡っていた。
昨晩遭遇した出来事……それは午前二時を少し過ぎた頃であった。
綾莉は何かの気配に目を覚ましていた。
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