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「マジカリンクポーションの効果が切れるのが二十日くらいかな、ホーホー。だから、その間試しに魔法少女になってみればいいよ、ホーホー。魔法少女を辞める辞めないはそれからでも遅くないよ、ホーホー」
「そんなの納得できないよぉ」
今の綾莉にはヌイグルミのコロコロと変わる口調も全く気にならなかった。
「まあまあ、魔法少女として最低三年間を全うすれば色々な特典も受けられるんだよ、ホーホー。それに功績が認められれば、死後私たちの世界へ転生できる権利も得られるの、ホーホー。じゃあ、さっき渡した書類にきちんと目を通しておいてね、ホーホー」
「そんなぁ……」
「ああ、食べかけのケーキは契約の証としてこちらで預かるね、ホーホー」
ヌイグルミはケーキと共に消えていく。
「ちょっと、待って、待ってぇ……」
綾莉はこうしてベッドの中で朝を迎えたのであった。
綾莉の目の前には記憶に新しくも夢であってほしかった存在がパタパタと……バタバタと……バッタバッタともがきながら……落ちた。
「何やってんの?」
綾莉は冷たく言い放ちながら首を傾げる。アスファルトに転がるフクロウのヌイグルミは、どう見ても直径十センチメートルくらいしかなかったのだ。
「この身体じゃ長く飛べないみたい……です、ホーホー。綾莉ちゃん、運んでくれませんか、ホーホー……」
「イッ! ヤッ! ダッ!」
小学生らしい見事なしかめっ面がヌイグルミに向けられる。
「怒ってます? ホーホー」
「先ずは、そのわざとらしい”ホーホー”をやめてっ! 話はそれからよ」
綾莉は既にヌイグルミが空を飛んで喋っている状況を完全に受け入れている事に何の違和感も感じていなかった。
「私も面倒になってきたところでした。それで……お願いできますか?」
ヌイグルミの声は最初に聞いた声に近くなっていた。
「しょうがないわね。でも遅刻しちゃうから話は歩きながらね」
綾莉はヌイグルミを拾い上げると掌に載せていた。
「ありがとう、綾莉ちゃん」
「べ、別にお礼なんて……ていうか、普通に話せるじゃん」
綾莉は周囲を気にしながら話した。今頃になってこの状況が普通でないことに気が付いたのだった。
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