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「普通に話せるのはこのヌイグルミに慣れてきたというのもありますが、綾莉ちゃんが魔法少女として覚醒したことが大きいのです。綾莉ちゃんのマジカルフォースを分けてもらうことで、こちらの世界でも本当の自分を保てるようになるのです」
「じゃあ、変な喋り方なんてしなきゃいいのに」
綾莉は周囲に聞こえぬようボリュームを下げて喋った。
「いえ、昨晩のままに続けた方が惑わせなくて済むかと思って……」
「まあいいや。それで話って何?」
昨晩と違い綾莉の声は力強かった。
「それでは、綾莉ちゃんが魔法少女に選ばれた理由をお話しします」
「ああ、うん。でも、小さい声でお願い。皆に聞こえちゃうから」
「その点は心得ていますよ」
ヌイグルミはパタパタと掌から飛び立つと肩の上に留まっていた。
「……それで?」
綾莉はヌイグルミを横目に見ながら話を促した。
「この世界は狙われているのです」
ヌイグルミは当然と言わんばかりに言い切った。
「やっぱり、そうくるんだ」
魔法少女世界の理のような文句に綾莉は溜息をひとつ吐いた。
「そうですね……」
「定番だよね」
「……」
「漫画とかアニメとかの話だけどね」
「……ならば話は早そうですね」
「待って待って。先に言っておくね。私に戦うなんて怖いことはできないからね」
綾莉は真剣な表情で言い切った。
「それは大丈夫。変身すればそんなことはなくなります」
ヌイグルミも負けじと言い返す。
「だから、私は戦わないって言ってるのっ!」
綾莉は大声で叫んでいた。
「大きな声を出すと周りから注目されてしまいますよ」
ヌイグルミは冷静に諭した。
「わ、分かってるわよ。大体、何で私なの?」
綾莉は周囲を確認すると小声で返した。
「それは、クリアスカイヤの魔法少女として一番相応しいと思えたからです」
「へー、そうなんだ」
綾莉の表情が少し緩んだ。
「では話を先に進めますね」
「……」
「世界は、綾莉ちゃんが住んでいるこの地球も含めて全部で七つ存在しているの」
ヌイグルミの口調が変わった。
「そうなんだ」
「私たちはこの地球をアセンブラールと呼んでいるの。世界については”魔法少女のすゝめ”に詳しく書いてあるから読んでおいてね」
徐々に馴れ馴れしくなっている。
「私、マンガしか読まないしっ」
綾莉は堂々と答える。
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