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いつものように決まった時間に乗る通勤電車。ホームから電車に乗る人、位置はいつもと違うけど、見たことある人達。決まった時間に決まった人が乗り入れる車両。みんな顔は知っているけど、話はした事がない不思議な縁の人達。
そんな中、少し気になる男の子が居た。可愛らしい高校生だ。青春真っ只中なんだろうなぁと思ってつい見てしまう。私にも10年前はそんな時があった。今はよれよれのスーツで、退屈な仕事をしに行く、くたびれた社会人だ。女ばかりの職場だからか男っ気も何もない寂しい毎日を過ごしている。
私の楽しみはその男の子を観察する事にあった。彼は背はあまり高くなく、制服は私立の男子校のものだった。彼は電車に乗ってる間スマホを触っている、フリをして周りの女子高生を見ている。
盗撮をしているわけではなかった。女の子に夢中になっているのだ。微笑ましい。男子校だから女の子と縁が無いのね。
彼とはよく目が合う。私が彼を見ているというのもあるけれど、彼もまたちょくちょく私を見ていた。高校生でも大人の女性に惹かれることがあるのかなぁと少しくすぐったかった。
そんな時、車両でちょっとしたイベントがあった。おおっぴらなイベントではなく、吊り革から下げられた吊り輪がハート型になっていたのだ。
可愛らしいけど、こんな恥ずかしい吊り輪なんて握る人いるのかな?そう思っていた。案の定、ほとんどの人はハート形の吊り輪を避けていた。もちろん私もだ。
そんなイベント中、たまたま私が車両に乗り込んだ時、ハート形の吊り輪の目の前に来ていた。私は乾いた心でハート形の吊り輪を握る。いつものあの子を探してみる。彼はドア付近に立っていて、顔を赤らめてこっちを見ている。
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