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思う存分泣いてすっきりして、ようやく部屋に戻ると、変わらず君は居た。
連れ帰ったのはきっと、寂しかったから。
誰でもいいから、そばにいて欲しかったから。
「お待たせ。…よし!明日の予定は無くなったし、今日は呑もう!付き合ってね?」
買ってきたスーパーの袋から、缶のお酒数本とお惣菜をテーブルに広げる。
*
「…有り得ないよねぇ。5年も付き合ったのにさぁ…、…有り得ない……」
4本目の缶ビールを飲みながら、止まるところを知らない愚痴。
君は何を言うでもなく、全部黙って微笑みながら聞いてくれた。
「思えばさ、先月くらいから冷たかったんだよね…あの人。…その時に気づけば良かった…。…馬鹿だね、1人で結婚とか指輪とか…浮かれて…。」
そっと、目の前の君に触れる。
「……冷たい…。手が冷たいと心は温かいって、あれ本当かな…。だとしたら、君の心は温かいね。私の愚痴を微笑みながら聞いてくれて、相手してくれて……あり…がと………」
気付いたら寝ていた。
翌朝目が覚めると、テーブルには昨日空けた缶とお惣菜の残骸。
そして私の手の先には水溜まりと木の枝が数本と小さい石が2つ。
君のおかげで、すっきりした気がする。
昨日君に会えて良かった。
君のおかげで、私は未練なく次に進めそうな気がする。
ありがとう。
冷たくて温かい、雪だるまさん。
fin
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