冷たくて温かい期間限定の君。

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出会ったのは、私が住んでいるこの街に初雪が降った日だった。 日が落ちるのが早くなった為に、夕方には既に暗い街中。 朝から降った雪は、私が帰る頃には街中を真っ白に変化させていた。 そんな日の仕事帰り、途中立ち寄ったスーパーの袋を片手に明日の休日をどう過ごそうか考えながら、いつもと同じ道を歩く。 家から近い公園の横を通り過ぎた時だった。 薄暗く誰もいない公園のベンチに、ぽつんと、君は居た。 いつもなら通り過ぎたと思う。 だけどこの日は、無性に気になってしまって…。 気付いたら連れ帰っていた。 「ごめんね、連れて来ちゃって…。とりあえず ここに居て?ちょっと先にシャワー浴びるから」 1人になって、シャワーに打たれ始めると、糸が切れたように目から涙が溢れた。 「…っ…うっ…つらぁ…っ」 まさか、5年も付き合った同僚の彼に、今日振られるなんて…誰が予想出来ただろうか。 結婚も間近だったのに…。明日もデートするはずで、結婚指輪見に行く約束もしていたのに。 "社長の娘と婚約する事になった。別れて欲しい。" そんなドラマみたいな事、まさか自分の身に起こるなんて…。 呆れてものも言えなかった。 "分かった。お幸せに。" なんて大人ぶって笑顔で受け入れた。 今この瞬間まで、涙なんて一滴も出なかったのにな。 振られてシャワー浴びながら泣くって、どんな安いドラマだよ…っ。
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