芳香は人の心を楽しませる

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 ヨエルには主婦から微かに立ち上る淀んだ気が見えた。  顔は笑顔なのに邪な何か。    「あなた方のお名前は?」  「僕は天海清(てんかいきよし)、彼は佐久間猛(さくまたけし)と言います。」  「あーーはははっは。清と猛って。お笑いコンビみたい。あは、あははぁ。覚え易くていいわぁ。」  やけにウケているが、何がおかしいのか二人には全く理解出来なかった。  暫く世間話に付き合わされた後、駅前の商店街を抜けて最寄り駅に向かった。  「これが新鮮って感覚なんだな。天界に無いものが沢山ある。美しさとは掛け離れているけど、ワクワクするよ。」  「全てが稚拙過ぎて言葉も無い。でもコンビニは好きだけどな。」  「ディオン、コンビニの店内ずっと歩き回ってたもんね。店員に怪しまれて。結局何も買わなかったけど。」  「迷い過ぎて何買っていいか分からなかったんだ。」
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