人はパンのみにて生くるにあらず

18/89
前へ
/308ページ
次へ
 バイタルチェックはした方が良いのかもしれない。  悪魔のディオンから見てもヨエルは地に足が付いていなさ過ぎる。  天使だからなのか。  天使はずっとフワフワしてるのか。  天使は無垢で清らかな存在だ。    無垢とは何者にも染まらない白。  真っ白──ずっと真っ白  突然、ディオンの内に異常なまでに人間臭い感情が芽生えた。  言い表すなら地にどっしりと根が生えたような。  冷蔵棚が並ぶ生鮮食品売場は特に寒い。  そう感じた途端にヨエルが腰に抱き付いてきた。  「もう卵もパンも買ったから出ようよ。此処は寒い。」  「あらあ、猛君と清君じゃない。二人でお買い物?新婚さんみたいね。うっふふ。やっぱり二人は……いいのよ、別に隠す事ないんだしお似合いなんだから。今は珍しい事じゃないものね。油揚げと塩辛だけ?あっちで売ってるアサリが安いわよ。お味噌汁にいいんじゃないかしら。」  ごみ捨て場で見掛けた事がある主婦だった。  
/308ページ

最初のコメントを投稿しよう!

68人が本棚に入れています
本棚に追加