芳香は人の心を楽しませる

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 周囲の視線などお構い無しで車窓からの眺めを満喫する。  電車の振動に合わせて心も揺れる。  特に目的地は決めていなかったが、何かに引き寄せられるように下北沢で降りた。  雑然としてゴミゴミして古臭いような新しいような。  剥がれ掛けたパンクバンドのギグ告知ポスター。  若者が多いようでいてそうでないような。  駅前から分かれる道を選ぶ事なく左に進む。  「ごみ捨て場の主婦、少し淀んでた。」  雑貨ショップの店先に置かれた背凭れがカエルの顔になっている風呂用チェアが目に止まった。  「俺は何も感じなかった。」  「浄化する程では無かったけど。個人を浄化するのは禁じられてるし。例えどんなに淀んでいても。」  人間界のバランスは天界魔界にも影響する。  今、魔界の上部三階層辺りに魂が集まり過ぎていた。  要は小悪党が多いという事だ。  そうした理由から、バランス調整の為に天使と悪魔が遣わされる。  
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