人はパンのみにて生くるにあらず

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 そんなものに参加したら陰湿、いや、悪気無いイジメに合うに決まっていた。  自覚の無いイジメ程怖いものはない。  いつの間にか電車は下北沢を過ぎ、次の停車駅は新宿という所まで進んでいた。  例の女性の姿が無い。  電車から降りたのだろうと直ぐに頭から消えた。    「この電車に乗ると最後は必ず新宿だね。違う電車に乗ってみたいよ。」  ディオンも新宿で買い物をする気になれない。  人も店も多過ぎる。  乗り換えというのもイマイチ不馴れな二人だが、何となく人の背を追う内に山手線のホームに立っていた。  「山手線は丸くなってるから、どっち方向に乗っても新宿に戻ってこれるね。」  戻ってこれなくてもヨエルが気にするとは思えなかった。  
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