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人の生死に対する無関心さは二人共通していた。
ヨエルが細い顎を空に向けた。
目を細め艶やかな唇が微かに開かれる。
雨だった。
「神が泣いておられる。」
「雨が降るメカニズムに添っているだけだ。習ってないのか?」
「ディオンの事が嫌いになったよ。」
ヨエルの眉間に皺が寄る。
「嫌い?」
自分で言っておきながらヨエルは首を傾げ、困惑した表情でディオンを見詰めた。
ディオンはというと、人間界に来て最も難解な感情に戸惑っていた。
「ともかく、濡れてしまう。」
ヨエルの身体をすっぽりと腕の中に包み込む。
「傘が必要だ。」
突然の雨に人集りが崩れ始めた。
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