芳香は人の心を楽しませる

20/27
前へ
/308ページ
次へ
 「え?」  「まだ中学生、いってても高校生に見えるけど。どういう関係?兄弟では無いよね。二人はまさか──」  眉間に皺寄せた詰問口調の刑事の顔が、脱水後のブリーフに見えた。  雨が降っている事を思い出し、朝ベランダに干した洗濯物の事が気になった。  「友達ですよ。アイツは20歳です。」  確かにヨエルは小柄で華奢で幼く見える。  「彼の身分証も見せて貰いたいんですが。」  ディオンが手招きするとヨエルがフワフワと此方にやって来た。  刑事は顰めっ面で保険証とヨエルを見比べている。  人間界で暮らす上で20歳以上にした方が都合が良い為、そういう設定になっている。  実年齢はディオンよりも歳上かもしれないが不明だ。  「お時間取らせて申し訳ありませんでした。」  漸く解放された。    「どう見ても怪しいんだがな……刑事の直感では……悪の匂いがする。」  刑事達の呟きが後ろで聞こえた。  
/308ページ

最初のコメントを投稿しよう!

68人が本棚に入れています
本棚に追加