芳香は人の心を楽しませる

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 ヨエルは一連の流れを微笑みを浮かべながら、ただ見守り続けた。  「神よ……」  空を見上げてヨエルは手を組み合わせた。  雨が止み、太陽が雲間から覗き光が降りてくる。  痛みを堪えながら片膝を立てたディオンの瞳には、ヨエルの流れるブロンドの髪と、背に広がる純白の翼が映っていた。  カラスがカーと一声鳴いた。 ────  「まだ痛む?」  「ああ、地獄のような痛みだ。」  固い路面にぶつけた尾底骨が痛くて仕方がない。  「これで良くならないかな。」  ヨエルがディオンの尻に向けて浄化の気を放射する。    「どう?」  「………」  「これを、良かったら。」 
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