芳香は人の心を楽しませる

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────  食欲をそそる香りが鼻先を擽り、カチャカチャ忙しない食器の音で、ディオンは身を起こした。  薄い掛け布団が腰まで下がる。  朝陽を受け細めた目の先に、全裸にエプロン姿のヨエルの後ろ姿を認め、更に眩しさが増した。  裸にエプロンというのは人間界では極ありふれた光景だっただろうか。  自信が無かった。    「裸にエプロンは風邪ひくんじゃないのか?」  「映像で見ただろ?」  ヨエルが反論する。  「でも、あれは少し種類が違うように思えた。」  「種類が違う?」  「いや、やっぱりエプロンは素肌に身に付けるものだった気がする。」  ディオンは慌てて訂正した。  
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