汝の敵を愛せよ

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 振り向くと緑のカエルが笑っていた。  いつも笑っている。  今に始まった事じゃない。  ドカッと腰を下ろす。  冷水を掛けたせいかカエルの微笑みのお陰か、彼の分身は勢いを失くして項垂れていた。  ガシガシとシャンプーの泡を立てながら、 人間とは、あらゆるものに支配される弱き生き物である事を実感した。  浴室のドアを開けた途端に、ヨエルの姿が目に入り心臓が跳ね上がる。  歯を磨くヨエルと洗面台の鏡ごしに視線が合う。  ディオンの全裸が映っていた。  慌ててバスタオルを取って隠す。  「ディオンって大きいよね。」  「ど、どこが?」  「全部!羨ましいよ。でも何で羨ましいのか分からないけど。」  局部を指している訳ではないらしいが、全身の血が熱くなる。  ヨエルの裸は隅々まで毎日堪能させて貰っているというのに。  ヨエルはTシャツにデニムという定番の格好でバシャバシャと顔を洗い始めた。  何処にでもいる普通の青年にしか見えない。
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