汝の敵を愛せよ

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 「お前は刺されそうになったんだ!何とも思わないのか!!」  自分の心には波が立って大変だったというのに。  今また訳の分からない何かに支配され掛かっているというのに。  「だって……死んでも天界に戻るだけだし。ああいう場合は人間らしく逃げたり悲鳴を上げた方がいいのかな。それで怒ってるの?」  「怒ってない……俺は洗濯する。洗う物洗濯機に入れたか?」  「今、着てる物も脱いだ方がいい?」  「裸で外に行くつもりか?」  「あ、そうだった。服少ししかないしね。裸でいつも寝てるから、つい。」  ヨエルは自分よりも人間界のルールを理解していない。  もしかしたら悪魔は天使のお守りとして遣わされているだけなのか。  そう思わずにはいられなかった。  「じゃあ、僕ゴミ捨て行ってくる。」  悪魔の方が人間に近いのかもしれない。  道理で地獄に魂が溢れる訳だ。
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