汝の敵を愛せよ

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 また電車の中にいた。  行き先は決めていない。  駅が多過ぎて選べないし、何をすべきなのか互いに良く分かっていないからだ。  「一緒に住んでる背の高い人とはどういう関係?とか。」  「どういう関係?一緒に住んでる以上の関係があるのか?」  「僕に聞かれても……そういうのディオンの方が詳しいでしょ?」  「じゃあ、何て答えたんだ。」  「コンビって言ったら凄い笑ってた。使い方間違ってたかな。」  「いや、間違ってないだろう。」  「ねえ、あの二人。イケメン……」  ヒソヒソと囁き交わす女子の声。  「でもダサっ!あのTシャツは無いでしょ。」    声を潜めているから余計に耳に入る。  ディオンは耳もいい。  ただ、意識を其方に向けさせたのは彼女達の声ではなく視線なのだと感じた。  椅子に腰掛ける二人の前方のドア脇に女子高生が三名立っていた。  見ていないのに見られている。   
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