汝の敵を愛せよ

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 新宿は何方のドアも開くのか。  取り敢えず人に倣う。  降りてからも女子高生達の視線が暫く纏わり付いてきていたが、いつの間にか失せた。    「今、何時?此処どこ?」  「新宿だ。」  そういえば今、何時なのだろう。  辺りを見回す。  駅中のショップの時計で時刻を確認した。  「4時42分だ。」  「ふーん。」  聞いた割には関心なさそうな返答だった。  時間の感覚や、時間に対する意識が基本的に欠如している。  根本的に時間が何かすら掴めておらず、1日が何時から何時までという区切りも曖昧だ。  朝日が昇って日が沈むまでが1日という農民のような認識でいる為、ヨエルは日の出と共に起きている。  だが日の入りと共に寝る訳ではない。  ディオンはヨエルの作る朝食の香りで目覚めているので、それなりに健康的で早起きといえるのかもしれない。  
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