汝の敵を愛せよ

25/64
前へ
/308ページ
次へ
 人、人、人で、気を付けていないとぶつかりそうだ。  擦れ違う人々の年齢は比較的若いと感じた。  「僕は下北沢の方が好きだな。」  「それより、何を食べる?」  「あ、あそこ!行きたい。」  ヨエルが指差したのはレストランではなく、左手に見えた紀伊国屋書店だった。    「じゃあ、入ってみよう。」  空腹は空腹だった。  だが時に性質が異なる二人は同じ物に興味を示し、人ならば優先すべき事柄を後回しにするか忘れる傾向にあった。  本館の地下から7Fまで様々なジャンルの書籍が揃っている。  1Fは一周して直ぐに飽きてエスカレーターで2Fに上がる。  ヨエルが水着姿のアイドルの写真集を手に取り熱心に眺めるのを、ディオンが横から覗き込む。  
/308ページ

最初のコメントを投稿しよう!

68人が本棚に入れています
本棚に追加