汝の敵を愛せよ

32/64
前へ
/308ページ
次へ
 女性店員の口角が右側に引き攣れているのが、洗濯バサミが一つ外れて片側だけでぶら下がるキッチンクロスを連想させた。  全五巻は手持ちではキツいし、表紙の過激さが巻を重ねるごとに増しているので、有料袋に入れて貰った。  ヨエルの姿を探すとまだ立ち読みしていた。  女性店員は視線を向けても注意する様子は無い。  天使だからか。  「ヨエル。」  女性店員の冷たい視線を感じた。  「ディオン、食いしんぼっていう、料理対決の漫画面白いよ。主人公が食いしん坊で相手側のまで食べちゃうから勝負が付かなくて持ち越しになるんだけど、五巻まで読んでもまだ勝負が付かないんだ。続きが気になるよ。」  「じゃあ買ってくればいい。」  
/308ページ

最初のコメントを投稿しよう!

68人が本棚に入れています
本棚に追加