汝の敵を愛せよ

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 「それより、顔の白い人達は何処にいるんですか?カブキは──」  「入ります。」  空腹を堪えきれずディオンはヨエルの言葉を遮った。  「多分、その歌舞伎とは違うんだろう。」  ヨエルの耳に囁き店員に付いてエレベーターで上る。  「らっっしゃいませ! 」  店内の凄い喧騒をディオンは地獄の亡者の叫びと捉えた。  会話というより怒鳴り合っている。  「ディオン、凄いね。学舎で見た地獄の映像に似てる。地獄の様子の方が刑事ドラマより面白かった。」  ディオンは席に座った途端にメニューを凝視した。  正体が捉えにくい料理名ばかりだ。  喉が渇いた。  「これ、美味しそう。綺麗な色だね。」  ピンク、イエロー、ライムグリーン、レッド、ホワイト、カラフルな色合いのドリンクが並ぶメニューをヨエルが差し出してくる。
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