汝の敵を愛せよ

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 「あっと御注文復唱しまっすねー。地獄のトムヤンクン、目玉入りシチュー、嘆きの卵焼き、串刺し地鶏、血塗れハンバーグ、と、恋のキューピッドお二つ、何で割りますか?」  恋のキューピッドとはイチゴミルク味のカクテルの事だ。  ディオンとヨエルが目を見合わせる。  「割る?……じゃあ頭で……」  「ひゃははっはは、ヤバイっすね。流石ヨシモト。地獄の御注文! 恋のキューピッド、ドタマ割り入りましたーー」  「はい、かしこまりぃ」  「はい、かしこまりぃ」  店員が威勢良く叫ぶと他の店員達が答える。  地獄と天国をイメージしたと言っていたが、店内の内装は殆ど地獄の要素しかない。  赤いライトにゾンビの人形。  棺桶まで置かれていて店員の衣装には一様に血糊。  天国らしいのは可愛いドリンク名のみ。  その割には生命力溢れる接客だった。
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